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レプリカ(化石模型)の世界
東海化石研究会
平成28年1月15日~4月10日

レプリカ(化石模型)の世界

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 自然史博物館には、その館の目玉になる化石がホールなど一番目に付くところに展示されています。それらは恐竜の化石や、絶滅した哺乳類の化石です。

 展示されている化石の多くは実物ではなく、その化石から型取りして復元作成されたレプリカ(摸型)です。  なぜ、多くの博物館は化石が展示に使用されるのでしょう。第一に、恐竜や大型哺乳類の化石は産出が希で、かつ多くの博物館が展示の目玉としていること。第二に、実物標本は収蔵庫に保管し、また、大型脊椎動物化石は完全に保存されていることはなく欠落が多いのが現状で、欠落部分を模型で補い復元されます。第三に実物標本は重量が有り、展示に大変だと思われます。そのほかにも理由はあると思います。

 さて、この大型化石のレプリカにも歴史が有ります。初期のレプリカの多くは、実物から採った型に石膏を流し込み作成されました。個々に作られたレプリカを鉄で作成した骨格に乗せていきました。そして全体を完成させています。石膏レプリカと鉄の骨格はかなりの重量になります。近年は模型を作成する素材も変わり、軽量なガラス繊維強化プラスチック(FRP)が多く使用されています。

 FRPは軽くて丈夫な素材です。中を空洞にして、その中に組み立て用の骨格を入れることができます。大型化石にはこのような手法が使われています。

0 小さな化石は、石膏やプラスチック樹脂が使われています。柔らかなラバーで型を取ったり、直接化石から模型を作ったりします。

 このような正確なレプリカもありますが、大きな脊推動物はほとんどの化石が何らかの変形を受けていて、産出した標本をもとに変形を修正して復元されます。

 また、最近では骨格標本から生きていた時の形態を推測する研究もおこなわれ、残された骨に付いている筋肉の付着痕を調ぺられています。このような研究をもとに、生態復元槙型なども作られています。

 博物館で展示される実物大復元もありますが、ミニュチュアサイズにしたフィギュアも多く作られ、一時期食玩のおまけとして流行しました。現在でも展示会などでは限定フィギュアが作成されてガチャガチャなどの機械で販売されています。

一方、粗悪な模型や、悪質なものも販売されています。今回展示した中国で作成されて市場に出回っている標本を展示しました。本物の粘板岩の上にゴム製の化石模型を張り付け、砂を塗布して本物の様に見せかけてあります。また、琥珀化石と称して、樹脂にサソリや蝶が封印された物もあります。

 レプリカの中でも有名なものを3点紹介します。

始祖鳥

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 始祖鳥は世界的に有名な化石で、1800年代半ばにドイツ南部のゾルンフォーフェンのジュラ紀後期の地層から発見されました。現在世界に11体しか標本がなく、その中でもロンドン標本と、ベルリン標本が有名です。今回展示した始祖鳥のレプリカはベルリン標本です。同じレプリカが2体展示してありますが、このレプリカは第二次大戦後の冷戦時代を物語るレプリカでもあります。冷戦時代ベルリン標本は東ドイツのベルリンにありました。冷戦が終わるまで大戦前に作成された型でレプリカが作られていました。冷戦中も始祖烏の研究は進められ、前肢の爪の部分が新たにクリーニングされました。1989年にベルリンの壁が崩壊すると、それ以降は新しい型によってレプリカが作成されるようになりました。細かな特徴を観察してください。






ティラノサウルスの歯 通称"スタン"

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 ティラノサウルスレックスの標本は北米大陸の白亜紀後期の地層から産出します。化石に詳しくない方でもその名前は聞いたことがある恐竜です。子供には一番人気の恐竜で、多くのレプリカが存在します。その中でもこの"スタン"と呼ばれる歯のレプリカは、大きさもさることながら完成度が高く迫力のあるレプリカです。

 やはり恐竜のレプリカは人気が高く、アロサウルスやトリケラトプスなど多く販売されています。







バージェス頁岩(けつがん)の化石 アノマノカリス、ピカイア、オパピニア

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 古生代カンブリア初期の化石で、生物が大発展した証拠の化石が多産することで、世界遺産に指定されています。

 多くは柔らかな化石として残りにくい部位が保存されています。黒色頁岩の上こ薄いシート状に化石が保存されていて、凸凹が少ないためレプリカとしては作成しにくい標本です。今回有名なアノマノカリス、ピカイア、オパピニアを展示しました。光の加減でよく見える位置があります。いろいろな角度で見てください。





文責 水野吉昭