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近代尾張の茶碗展 大石浩士コレクション
平成22年5月7日~8月8日
幕末から大戦前までの瀬戸、常滑、名古屋近郊の茶碗を共蓋と展示

加藤春厚奥村恭法横井米禽楽々焼

窯業が盛んな尾張地方

 尾張地方は太古の昔より窯業が盛んであり、六古窯と呼ばれる古窯が瀬戸・常滑と二ヶ所もあり、連綿と伝統・文化・技術を伝承して今日に至っております。また尾張の中心、名古屋においても江戸中期頃より地理的影響や茶どころとしての需要からか、数多くの窯が築かれ炎煙が上がっておりました。

江戸後期から明治

 この様に長い尾張陶史の中において江戸後期から明治にかけては、ある意味で画期的な時期であったと思います。それまでは単なる窯場の陶工が他分野との美術・文化と接点を持ち、たとえば僧侶・南画家・茶人など文化人との融合により作家という概念が生まれ、製品を自分の作だと自己顕示する様になり、作品に印銘・彫銘を施し更には箱書をする様になってきました。現代作家では当たり前のことが、この時期から盛んになり定着してきました。

明治から昭和初期

 また、明治から昭和初期は日清・日露戦争、満州事変、そして大東亜戦争と激動の時代であり、産業面に対する思想的・経済的な統制や「マル技」への材料配給、やがての燃料・原料不足など、窯屋・陶工にとって現在とは比較できないほど不遇な時期であったと思います。その様な状況下で更に文人・書家・南画家などとの合作を進化させ「農展」「帝展」への出展や美術陶芸集団などを結成し、芸術性を高めていった先人たちには感服します。

戦争で多くを失う

 しかし残念ながら先の戦火により、かなりの作品・資料等また名古屋の窯場にいたっては、その大多数が焼失してしまいました。

共蓋とともに展示

 さて今回はその当時の窯場・作家たちの茶碗を、ほとんど共蓋・識蓋と一緒に展示します。先達方から受継いだ地域文化に敬意を払い次世代へ継承したい祈りを込め、現在忘れ去られようとしている尾張の先人たちの息吹を感じ、再認、再考してもらえれば幸いです。

謝辞

 最後に、名古屋開府400年にこの様な展示の開催に御協力いただいた、荒木集成館に心より感謝いたします。

大石浩士

出展目録

1加藤春厚無印 平沢九朗識箱江戸瀬戸
2加藤春岱春岱楕円印 加藤春仙識箱江戸-明治瀬戸
3初代加藤春花春花楕円印 共箱江戸-明治瀬戸
4加藤五郎八五郎八彫銘 共箱江戸-明治瀬戸
5加藤素雪素雪造彫銘 素雪楕円印 加藤柏堂識箱江戸-明治瀬戸
6加藤五助陶玉園五助染銘 加藤柏堂識箱明治-大正瀬戸
7二代加藤作助花押 古瀬戸窯 春仙印 彫銘 共箱明治-大正瀬戸
8初代加藤春二葵印 共箱 己未(大正8年)明治-大正瀬戸
9二十八世加藤唐三郎陶仙印 共箱明治-大正瀬戸
10初代水野寿山寿山丸印 共箱明治-大正瀬戸
11加藤麦袋麦袋楕円印 共箱明治-昭和瀬戸
12伊勢門水花押 麦袋彫銘 古稀印 共箱明治-昭和瀬戸
13松岡寛慶渇山花押 米山(京次郎)丸印 共箱明治-昭和瀬戸
14七代加藤春暁春日窯印 春暁彫銘 共箱 小林松僊画大正-昭和瀬戸
15四代伊奈長三長三丸印 共箱江戸-大正常滑
16二代杉江寿門寿門彫銘 共箱明治-大正常滑
17水川玉斎玉斎丸印 共箱明治-昭和常滑
18瀧田椿溪古稀 椿溪造彫銘 共箱明治-昭和常滑
19富本梅月梅月造彫銘 共箱明治-昭和常滑
20松本重信重信造彫銘 共箱 山本石荘画明治-昭和常滑
21二代片岡二光二光楕円印 共箱明治-昭和常滑
22初代井上素三不識庵印 共箱明治-昭和常滑
23二代磯村白斎白斎菱形印 共箱大正-昭和常滑
24初代不二見焼不二山人染銘 三代識箱江戸-明治名古屋
25四代不二見焼ふ二印 共箱明治-昭和名古屋
26伝風花翁痴犬?四角印 時代箱江戸-明治名古屋
27夜寒焼夜寒印 共箱明治-大正名古屋
28嘉楽焼嘉楽印 共箱明治-昭和名古屋
29奥村恭法六代豊楽丸印 共箱明治-大正名古屋
30八代豊楽焼豊楽丸印 共箱大正名古屋
31三代笹島焼笹島印 共箱 一江芳秋画 甲寅(大正3年)大正名古屋
32加藤石春石春四角印 共箱大正-昭和名古屋
33横井米禽米禽丸印 共箱 石河有粼画大正-昭和名古屋
34鶴舞焼山古印 共箱 朝見香城画大正-昭和名古屋
35住田智見閑凡夫銘山古印 共箱大正-昭和名古屋
36初代中村道年道年丸印 共箱大正-昭和名古屋
37月谷焼月谷印 共箱大正-昭和名古屋
38楽々焼多年瓢箪印 共箱昭和名古屋
39大橋秋二秋二造彫銘 初代加藤春二識箱江戸津島
40三代尾関作十郎三世犬山丸印 共箱明治-大正犬山